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カタクリを撮る

スプリングエフェメラル、春の妖精とも呼ばれる野の花、カタクリ。
その可憐な姿は、春の訪れを教えてくれるとともに、春のパステルカラーの写真には欠かせない存在です。
ここでは、そのカタクリの撮り方を説明していきます。

撮影の前に心しておくこと

カタクリは野生植物で多くの地域でレッドリストの指定を受けており、絶滅が危惧されている植物。
撮影時には花を踏まないのはもちろん、まだ花をつけていない成長過程の葉にも気をつけてください。種が落ち、小さな葉が出てから花が咲くまで約8年もかかるのです。三脚の使用はできるだけ避け、遊歩道から群生地には絶対入り込まないようにしましょう。

レンズを使い分ける

花の撮影では、広角レンズ(または標準ズームの広角側)、望遠レンズ(望遠ズーム)、そしてマクロレンズ、のどれを使うかによって、表現が大きく変わってきます。カタクリの撮影では基本的に、広角か望遠となります。どのイメージで撮りたいかを決めることが最初の一歩。カメラの撮影モードは絞り優先モードにします。

広角レンズで撮る

広角レンズで撮ると背景が広く写ります。
咲いている場所の雰囲気を大きく入れて広さを表現したい時は広角レンズ(標準ズームの広角側)を使いましょう。背景のボケ具合は絞りで調節します。そして大事なポイントは
花の大きさはカメラを近づけることで調節するということ。レンズのズームを動かしてしまうとせっかく広く入った背景が狭くなってしまいます。
背景のボケ具合は好みで、ボカしたければ絞り値を小さく、逆にはっきりと写したければ絞り値を大きくします。どちらかというと、主役の花を引き立てたければ背景はボケた方が良いでしょう。

望遠レンズを使う

望遠レンズを使うと背景が大きくボケます。
望遠レンズ(望遠ズーム)では、絞り値を最小にすることで、広角レンズでは得られなかったボケが表現できます。背景のボケだけでなく、ピントを合わせた花より手間の花や葉は「前ボケ」となって背景ボケとは違う雰囲気のボケを演出します。ポイントは
手前の花ではなくちょっと遠くの花にピントを合わせることです。
具体的には、100〜200mmの望遠では1〜2m先の花にピントを合わせます。そうすることで背景ボケと前ボケ両方が得られます。私の感覚では、レンズの焦点距離だけカメラから離れた位置にある花を主役にすると、花がちょうど良い大きさに写る感じがします。

カメラの高さが大切

花の撮影ではカメラの高さにより、写る背景が大きく変わります。花と同じ高さかそれよりも低くカメラを構えるのが基本です。また光の方向を見極め、晴れた日は逆光で狙うと透明感が出てきます。
カメラの設定では、やわらかく撮りたい場合はコントラストを下げること、そして明るさは露出補正で好みに合わせます。

カメラは地面すれすれで

カメラを高い位置で構えると、地面が花の背景になってしまい、背景のボケも中途半端なものになってしまいます。カメラ位置を低くすることで、遠くの背景が写るようになり、より大きなボケが得られます。また、前ボケとなるものもレンズのすぐ前に来るようになり、前ボケができやすくなります。
ファインダーを覗きながらではかなりきつい体勢なりますので、液晶モニタを起こして、モニタを見ながら撮影すると良いでしょう。

ピントはマニュアルフォーカス

前ボケが入らない広角レンズでの撮影ではオートフォーカスで問題なくピントが合いますが、望遠レンズを使い前ボケが入ってくると、主役の花になかなかピントが合いません。そのような場合は思い切ってピント合わせをマニュアルフォーカス(MF)にして、レンズのピントリングを回しながら、ピントを合わせます。
この時、ピントを合わせたい部分がハッキリ見えていれば良く、フォーカスエリアの枠は無視しても大丈夫です。画像を見ながらピントリングを大きく回していくと、思いもかけない幻想的な映像が見えてくることもあります。